イブラヒモってどんな紐?

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囲碁観戦記の虜(とりこ)

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相変わらず囲碁は打てないのだが、新聞に載っている囲碁観戦記は毎朝の楽しみだ。

なにが楽しいのかというと、予備知識なしに未知の世界を覗くことで、すっかり暗号化された日本語に触れられること。それを読んで「うわー!なに言ってるか全然わからーん!」っていうのを楽しんでいる。難解であれば難解であるほど嬉しい。

そういえば、わずか一文で魅了されたセンセーショナルな観戦記のことを思い出したので、今回はそれを紹介しておこう。それは「第15回 世界学生囲碁王座戦」の囲碁観戦記*1。冒頭の一文を書き抜く。

左上白18のツケに黒19と二間ビラキする流行の定石から、白22とハサんだのが積極的な打ち方。

ほら、わからない。さっぱりだ。おおいに無駄を省いた簡潔な文章。リズムがあって小気味よい。しかし、わからない。この先もさまざまな「わからない」に遭遇しながら読み進んでいくと、最後は次のように結ばれていた。

黒はコウ争いに勝てず、結局左下を黒205と解消した代わりに左上を白206と制せられ、勝負あり。盤面でも白がだいぶいいという。

なんだか不思議な結びである。「勝負あり!白の勝ち!」とは言わず、「白がだいぶいいという」。

この含みの持たせかたは、囲碁業界に特有の表現なのか、それとも「黒も良かったけど、どちらかというと白の方がだいぶ良かった」という敗者に向けられた執筆者の気遣いなのだろうか。

勝ちなのか負けなのか、囲碁だけに白黒をハッキリつけて欲しいものです。

上手いっ!

さて。

囲碁観戦記は、限られた紙幅のなかで、正確に・端的に盤上の攻防を記さなければならないのだから、「わかる者だけが、わかればいい」というスタンスで書かれている。それは当然のこと。

しかし、囲碁観戦記の書きかたは執筆者により十人十色。全部が全部、暗号化された文章かというとそうでもなくて、なかにはびっくりするほど砕けた文章で書かれた囲碁観戦記だって存在するのである。

そう、吉田美香さんのようにね。

 

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www.afutsuka-kouji.work

 

*1:2017年3月6日月曜日、日本経済新聞(朝刊)に掲載。執筆者は不明。