クイズ番組に『99人の壁』があるが、最近目の前に立ちはだかったのは「3人の壁」だった。
夕方、浦上川沿いの歩道をジョギングしていると、遠くの方にウォーキングをする3人組の後ろ姿があった。ほどなく差が縮まり10m。年配のご婦人が歩道いっぱいに広がって、お喋りをしながらお散歩中だ。
背後に迫る気配を感じたのだろう。それぞれが、こちらをちらちらと振り返っている。しかし、道を空ける素振りはみせない。
5m。歩道と3人との隙間のうち、どこをすり抜けようかと考えたが、ぶつかるリスクが高すぎる。咄嗟に「通ります!」と声を掛けた。
ご婦人方は、今気づきましたという様子で「あらあら!」「ごめんなさい!」とキャピキャピっと道を空けてくれて、事なきを得た。
しかし、腑に落ちない。気づいているのに誰も動かなかったのはなぜだろう。
もしかすると、仲間に「どけて」と指図するのを嫌ったのではないか。それとも、他の誰かが「どけて」と言うのを待ったのか。
いずれにせよ、誰も突出しない横並びのフォーメーションは、事なかれの関係性を表しているように思えた。
別の日の夕方、例のご婦人方が前を歩いていた。今度は「4人の壁」だ。もはや迷うことなく「通ります!」と声を掛けて、難なく走り抜けた。
相手が3人でも4人でも…たぶん99人でも、「ご婦人方の壁」の攻略法は同じである。「通ります!」と意思を伝えるって大事なことだ。